さいたま赤十字病院

呼吸器外科

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学会 等により休診となる場合がありますので、平日の午後、時間内に外来にお問い合わせください。
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眞木 充

副部長

 

呼吸器外科のご案内

   当院の呼吸器外科は、1992年8月に第四外科部から呼吸器外科部への名称変更に伴い、単科として診療を行い始めましたが、2015年7月より診療部長の交代に伴い、自治医科大学附属病院(栃木県下野市)及び自治医科大学附属さいたま医療センター(さいたま市)の協力の元、診療を行う体制になりました。肺、縦隔、胸膜・胸壁の疾患の外科的治療(手術)を中心に行っており、対象となる疾患は以下の通りです。

 

原発性肺がん

日本人のがん死亡を臓器部位別にみると男女ともに肺がんが最多で、その罹患と死亡は増え続けていることから重要な疾患であるといっても過言ではありません。肺がんに対する最も効果的な治療は手術であり、手術可能な時期に発見し、手術を中心とした治療を行うことがカギとなります。当院では、呼吸器内科と密に連携を取り、肺がんの診断や化学療法を呼吸器内科に委ね、当科で手術を行うというように役割を分担することで診療に特化する形をとっております。自治医科大学のグループの治療成績では、肺がん術後5年生存率はIA期80%、IB期60%、II期50%、IIIA期45%となっております。手術は小さな創から内視鏡カメラや手術器具を挿入する胸腔鏡手術(後述)を中心に行っておりますが、病状に応じて従来の肋骨切離を伴う開胸手術を選択することもあります。また、肺がんの標準手術である肺葉切除(縦隔肺門リンパ節郭清)を中心に行っておりますが、病変の状況や患者さんの呼吸機能を考慮しながら、肺を温存する縮小手術(区域切除・部分切除)も積極的に行っております。上記で述べましたように、当院では患者さん毎に適切な治療方法を選択するように心がけております。典型的な胸腔鏡下での肺切除術であれば術後1週間程度で退院可能です。

 

転移性肺腫瘍

心臓からの血液を受ける肺は全身からの血液が流れることになりますので、他臓器のがんからの転移を起こしやすい臓器といえます。手術の適応になることが多いのは、大腸がんや腎がんからの転移病変ですが、原発病変のコントロールができている状況で肺病変が完全に切除可能であれば、食道がん、胃がん、乳がん、子宮がん、膀胱がん、喉頭がん、骨軟部腫瘍等、あらゆる種類のがんの転移病変を対象にしております。また、完全切除にならなくとも肺病変を診断することで治療方針が決定するような状況では積極的に手術を行っております。基本的には胸腔鏡手術で、可能な限り肺を温存するように腫瘍を切除する手術を行い、切除範囲が広範囲にならなければ、術後4-5日程度で退院可能です。

 

気胸

肺に孔が開くことで空気が漏れて、肺の周囲の空間(胸腔)に空気が貯留し、肺がしぼんでしまう状態です。胸腔内に管(ドレーン)を挿入することで漏れた空気を脱気して治療します。胸を強打することで起こる外傷性気胸の他に、外傷がなくても起こる自然気胸があり、自然気胸の原因は脆弱な肺(ブラ)にあります。また、女性の方では生理・月経に伴う異所性子宮内膜が原因となる月経随伴性気胸というものもあります。ドレーン挿入後に空気漏れが持続する場合、繰り返す(ドレーンによる治療では30-50%が再発します)場合、画像検査でブラが明瞭な場合には手術をお勧めします。手術はほぼ全例で胸腔鏡手術を選択し、ブラが発生している部位の肺を切離閉鎖したり、吸収性のシートで被覆したりすることで修復する方法が主体で、術後3-4日程度で退院可能です。

 

縦隔腫瘍

【縦隔】とは胸の中で、両側の肺の間に挟まれた隙間のことを指します。この縦隔に発生する腫瘍の70%は良性ですが、悪性のこともありますので検診などで指摘されましたら、早めに医療機関を受診することをお勧めします。心臓に隠れるために検診のレントゲンではわかりづらく、症状も出づらいので腫瘍が大きくなるまで発見されることも少なくありません。診断をつける為には、体表から針を刺す又は胸腔鏡で鏡視下に組織・細胞を採取することが必要になりますが、より正確な診断と完全切除による治療に繋がるという点からは胸腔鏡手術を積極的に行っており、手術は1-2時間程度、術後4-5日程度で退院可能です。腫瘍の大きさや部位によっては、開胸(肋骨切離・胸骨切開)手術を選択することもあります。

 

膿胸

胸腔内に感染が波及し、液体や膿が貯留してしまった状態です。ドレーンを挿入することで、胸腔内の液体や膿を外に出す(ドレナージ)と抗生剤治療を行いますが、難治性になってしまった際には手術を行います。手術は先述の如く胸腔鏡手術を積極的に行い、手術は1-2時間程度で終わりますが、入院期間については病状に応じて大きく変わります。

 

上記以外にも、炎症性(肺真菌症・非結核性抗酸菌症)肺疾患、胸壁・胸膜腫瘍、重症筋無力症に対する胸腺摘出、間質性肺炎に対する肺生検、原因不明の縦隔リンパ節腫大に対するリンパ節生検などの手術も行っております。ご気軽にご相談ください。

 

胸腔鏡手術について

従来の胸部の手術は、30cm前後の皮膚切開と筋肉と肋骨を切断し、肋間を開大して行われていましたが、時代の流れと共に低侵襲な手術が注目を集め、胸腔鏡手術という新しい方法が導入されるようになりました。胸腔鏡手術とは、胸腔鏡という細長い内視鏡カメラを肋骨の間(肋間)から挿入して、テレビモニターに映し出される画面を見ながら手術を行う方法です。

;胸腔鏡技術の進化により、肺がんに対する標準手術(肺葉切除+縦隔リンパ節郭清)も3-5cmの皮膚切開で、肋骨を切断することなく行うことが可能になり、術後合併症の減少や呼吸機能の温存などから早期の社会復帰も期待できます。

当科では、自治医科大学附属病院、自治医科大学附属さいたま医療センターと同様の手技で行っており、肺がん患者さんの70%程が胸腔鏡手術を受けられております。4-5個の小孔で肺がんの標準手術を2-3時間で行っており、術後も4-7日程度で退院される患者さんが大部分になっております。

手術実績
2019年(2019年1月~12月)
総手術件数: 235件(同一入院期間中の再手術を除く)
疾患 術式 件数 内 胸腔鏡手術件数

原発性肺がん

142件 

肺全摘除 1 0
肺葉切除 97 81 (84%)
肺区域切除 20  20 
肺部分切除 24  24 

気胸

46件 

肺嚢胞切除 44  44 
その他

縦隔腫瘍

10件 

悪性腫瘍摘出
良性腫瘍摘出

転移性肺腫瘍

9件

肺区域切除
肺部分切除

肺良性腫瘍

12件 

肺葉切除
肺区域切除
肺部分切除
その他 様々な術式  16 15 
合  計 235 219(91%)

 

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