皮膚科 いぼ専門外来
痛みがなく早くいぼを治したい患者さんへ
ウイルス性疣贅(ゆうぜい)とは
- いわゆる疣贅(ゆうぜい)はヒトからヒトへ感染する皮膚病で、ヒトパピローマウイルス(HPV) が原因で生じます。現在のところ、HPVは220種類以上にも異なるタイプがあるといわれています。
(ノーベル生理医学賞の選考委員会で有名なカロリンスカ研究所のHPに掲載)
- その分類はウイルス 遺伝子の粒子を作成するといわれる約1500塩基配列からなる L1領域の比較により、遺伝子の相同性 が 70%〜90%の場合には異なるHPVと判断されます。いぼには多くの種類があり、皮膚科専門医でさえ診断に苦慮することがあります。
- HPV の種類によって感染しやすい部位(皮膚や粘膜)があり、生じるいぼが全く違ってきま す。また子宮頸がんを引き起こす HPV16/18 型は皮膚がんにも認めらる場合があります。しかし多くの疣贅ではノンリスクの HPV の感染であるため、がん化することはありません。担当医は疣贅のHPV遺伝子同定検査により、新しいHPV 160 型を発見し、カロリンスカ研究所で認定されています。 (詳細はコチラ)
ウイルス性疣贅の種類
1) 尋常性疣贅 (じんじょうせいゆうぜい)
子供や大人の手足にみられるいぼ。豌豆大までの結節で、表面ががさがさしています。HPV は手荒れや爪の周囲のささくれから侵入しやすいため、手指はいぼができやすい部位です。足の裏のいぼは体重がかかるため、隆起してきません。小さいいぼは表面がつるつるして光ってみえることがあります。HPV2, 27, 57 型の感染で生じます。
2)扁平疣贅 (へんぺいゆうぜい)
顔、手の甲、下腿にみられる褐色調のいぼ。青年期の女性にみられやすいです。顔のひっかき傷からHPVが感染すると、線状にいぼ(ケブネル現象)がみられることがあります。小さな老人性 いぼとの鑑別は非常に困難なことがあります。HPV3, 10, 28, 29, 77, 78, 94, 117, 125, 160型の感染で生じます。
3)尖圭コンジローマ (性器疣贅)
性行為や類似行為によって感染し、肛門周囲、外陰部、口腔内に生じるいぼ。イミキモド外用など 保険適用のある治療法を取り入れています。HPV6, 11 型の感染て生じます。早期治癒についての詳細はコチラ
4)その他の特殊ないぼ (疣)
- まれないぼとして指状・糸状疣贅、色素性疣贅や足の裏に生じるミルメシア、モザイク疣贅、ドーナツ疣贅、足底表皮様嚢腫、点状疣贅らも日常診療でみる機会がありますが、これらも同様にウイルス性疣贅です。
- 子どもにみられるみずいぼ(伝染性軟属腫 でんせんせいなんぞくしゅ)の原因は伝染性軟属腫ウイルスの感染によって生じます。みずいぼは夏のプールに入る時期やアトピー性皮膚炎の患者さんにみられることがあります。治療は麻酔のテープを貼り、痛くなくみずいぼを除去する方法(保険適応)や、接触免疫療法を行っています。
ウイルス性疣贅と鑑別する皮膚病
- ウイルス感染でない‘いぼ’としては軟性線維腫(スキンタッグ、アクロコルドン)や老人性疣贅があり、加齢、紫外線、摩擦らによって顔、デコルテ、脇、腹部に生じます。
- その他、足の裏にできるウオノメやタコがあります。
- また顔にできやすい扁平疣贅は汗管腫、脂腺増殖症、ミリウムといった良性腫瘍や老人性疣贅との鑑別が難しく、誤診されることがあります。これらはウイルス感染症ではないのでヒトへ感染することはありません。
ウイルス性疣贅の検査方法
視診でほぼ診断がつきますが、ダーモスコピー(拡大鏡でみるような方法)で詳細に観察したりします。確定診断で病理組織検査(保険適用)や、必要の際はHPV遺伝子同定検査を行ったりすることがあります。病理組織検査は主に難治性のいぼや診断が難しいケースで行います。(ウイルス性疣贅に特徴ある細胞病原性効果の確認を致します)
いぼ(疣)の治療方法
- いぼ治療の第一選択は液体窒素凍結療法です。しかしこの治療法のみでは、いぼはなかなか治らず、病院での治療後、ジンジンと患部が痛み、苦しい思いをする患者さんも少なくありません。特に子供さんには非常に痛く、つらく感じ、病院嫌いになることもあります。
- 当科では、足の裏、爪部、著しい角質肥厚、標準的な治療に抵抗性で2年以上治らない難治性疣贅や多数の疣贅がある患者さんに対して
1)痛くない治療
1.接触免疫療法(DPCP外用);外用液を塗って治す方法 さいたま赤十字病院独自に作成
2.外用療法〔高濃度サリチル酸軟膏:さいたま赤十字病院独自に作成〕
3.その他の内服療法
2)早く治す方法
1.ブレオマイシン局所注入療法:最短2回の注射で1ヶ月半で治癒します。主に足の裏に施術を行います。
2.炭酸ガスレーザー
3.可変式ロングパルスダイレーザー治療
4.電気焼灼
- これらの治療を時には組みあわせ、良好な治療結果が得られています。これらの治療法は良質の治療法を評価した英語論文(Cochrane Database Syst Rev.;2012(9):CD001781), 英国皮膚科学会ガイドライン、日本皮膚科学会ガイドラインを参考にして行っています。
- 尖圭コンジローマの治療はべセルナクリーム®️という保険適用のある薬剤を使用します。しかし尖圭コンジローマのサイズが大きいと、べセルナクリーム®️外用では十分な効果を認めないため、当科の治療は第一に尖圭コンジローマの病変に局所麻酔を行い、炭酸ガスレーザーで摘除します。残存した小さな病変や再発をきたした小さな病変に対してのみにべセルナクリーム®️外用を行い、完全治癒を試みています。べセルナクリーム®️外用のみでは6ヶ月以上は治療を要するケースが少なくないため、当科の治療では早期に完全治癒するために、患者さんの満足度が高いと言えます。
当科では包茎(仮性、嵌頓、真性)の尖圭コンジローマの患者さんの治療において、環状切開法も併せて保険治療で行っています。当科の医師は、長年にわたり包茎手術の経験が豊富で、安心して治療を受けていただけます。また、日帰り手術後に激しい痛みや出血が止まらないといったトラブルを避けるため、当科では短期間の入院が可能な充実した施設を備えています。手術後の経過をしっかりと見守ることができるため、安心して治療を受けていただけます。
HPV感染症である尖圭コンジローマにお悩みの方は、ぜひご相談ください。
- インターフェロン局所注入、グルタルアルデヒド外用(毒性のある消毒液;ヒトへの外用は禁止)や木酢液外用、お灸といった民間療法など欧米においてエビデンスのない治療法は当科では一切取り入れておりません。いぼの治療にはプラセボ効果といい、どの治療を行っても 30%程度の効果がありえます。
- 治療前にいぼの原因である HPVとはどういうウイルスであるかや治療法について詳しく説明したあとに、多数の治療法の中からより良い治療法を選択致します。また紫外線、加齢からくる顔やデコルテの老人性いぼや摩擦、紫外線による軟性線維腫(首いぼ、脇いぼ、腹いぼ)については1回の治療で終えるレーザー治療も行っています。いぼの正しい診断と治療が早期治癒と再発の ない結果につながります。
早くいぼを治したい、痛くない治療を希望の患者さんは是非当科を受診してください。
いぼ外来を受診するには
初診の患者さんは原則として紹介状を必要とします。さいたま赤十字病院の予約センター(048-852-1180)にお問い合わせください。
メディア情報
テレビ出演
- 朝イチ(NHKテレビ)
- 2021年5月31日 Live放送 「専門家に聞く! 首のイボ・ひざの黒ずみ・かかとのガサガサ対処法」
- チョイス@病気になったとき(NHKテレビ)
- 2020年8月15日放送 「気になるイボ徹底対策」
- きょうの健康(NHKテレビ)
- 2020年5月19日(再放送 5月26日) 「まずは原因究明! イボ対処法」
- ためしてガッテン(NHKテレビ)
- 2014年7月30日放送 「偽ニキビの正体・美肌の大敵!」
参考文献
参考文献はこちら
実際の症例
電気外科療法による多発性疣贅の治療
治療前
治療後
難治性足底疣贅の治療経過
手指・足趾のいぼの治療前後
足底の巨大疣贅の治療
治療前
治療後
扁平疣贅の治療前後
扁平いぼと誤認されやすい皮膚病
(脂漏性角化症(老人性いぼ) )
小児の多発性疣贅
7歳、男児。初診の3年前から病悩 6ヶ月で治癒
炭酸ガスレーザーによる足底疣贅の治療
炭酸ガスレーザー照射の実際
尋常性疣贅の治療
治療前
炭酸ガスレーザー治療直後 閉鎖療法を励行
治療後
ロングパルスダイレーザー 9 回照射後治癒
足底疣贅へのヨクイニンエキス内服治療
治療前
ヨクイニンエキス内服治療中
ヨクイニンエキス内服で治癒